分譲マンションは、経年により建物が劣化するため、定期的に大規模修繕を実施する必要があります。ただ、大規模修繕の経験がない方にとっては、一体どのような工事が行われるのかイメージができないことも多いのではないでしょうか?
このページでは、大規模修繕が必要な理由やマンション購入をご検討の方や、すでにマンションに居住中の方にも知っておいていただきたい大規模修繕工事中の注意点について説明いたします。
そもそも、マンションの大規模修繕はなぜ必要なのでしょうか?その理由としては、主に以下の3つが挙げられます。
分譲マンションに限らず、どんな建物であっても時間が経過するほど建物や設備は劣化していきます。そのため、マンションでは、管理組合の修繕計画に基づき、大規模修繕や小規模なメンテナンスが定期的に実施されます。
もし、大規模修繕を行わずそのまま放置してしまえば、建物の美観に影響を及ぼすだけではなく、生活においても雨漏りや手すりの錆によって腐食が進行し崩壊してしまうなどの様々な不具合や事故が起こる危険性があります。
実際に2020年2月には、神奈川県逗子市でマンションの敷地の斜面が崩落し、通学中で近所の高校に通う女子生徒が崩落に巻き込まれ、死亡してしまうという痛ましい事故も起こっています。
この事故で遺族は、区分所有者と管理会社に対して安全対策を怠って事故が起きたとして、損害賠償請求や業務上過失致死などを横浜地裁に提訴しています。
区分所有者は、法律上マンションの所有権を得ることとなりますが、それと同時に管理責任を負うことにもなります。マンションの大規模修繕は、このような事故を防ぐという重要な役割も担っているのです。
大規模修繕が必要な理由としては、マンションの資産価値の維持という点も挙げられます。大規模修繕を実施しないで劣化を放置してしまうと、見た目が悪くなるだけではなく、雨漏りや設備故障によって生活に支障をきたしてしまうことがあります。
また、故障や不具合が起きていない場合であっても、付属する設備の仕様が古くなることで、生活に不便さを感じることもあります。そのような不便さや不具合によって、住宅としての暮らしやすさが損なわれてしまうと、建物の価値も低下してしまいます。
建物の価値が下がってしまうと、将来的に売却や賃貸で貸し出す際に、価格や家賃を下げざるを得なくなってしまいます。そのような事態を防ぐためにも、大規模修繕は非常に重要な工事と言えます。
日本は世界の中でも急速に高齢化が進んだ国であり、最も高齢化率が高く深刻な状態となっています。そのため、高齢化社会を迎えるにあたって、マンションのバリアフリー化も新たな課題となっています。
今後バリアフリー化に対応できなければ、居住者が住みにくさを感じることによる居住者の減少や資産価値が低下してしまう恐れもあるため、高齢化を想定したバリアフリー化は大規模修繕を行う際の重要な課題のひとつとなります。
マンションは経年によって徐々に劣化が進行するので、資産価値の低下を防ぐためにも定期的な大規模修繕を実施していかなければいけません。
大規模修繕を行う時期は、早すぎたり遅すぎたりすると無駄な費用負担が生じる恐れもあるため、建物の状態をしっかりと把握したうえで適切な時期に修繕工事を実施する必要があり、分譲マンションの長期修繕計画は、12〜15年周期で大規模修繕を行うことが一般的な目安とされています。
修繕に掛かる費用の目安は、マンションの規模や状態によって異なりますが、一般的には一戸あたり100万円前後必要とされています。
2021年に国土交通省が調査した結果(令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)によると、マンションの大規模修繕の一戸あたりにかかった費用は、最も多かったもので75万円〜100万円(回答全体の30.6%)次いで100万円〜125万円(同24.7%)、さらに50万円〜75万円(同13.8%)となっています。
マンションの大規模修繕の費用は高額になるため、区分所有者が毎月一定の「修繕積立金」を積み立てていきます。国土交通省の調査結果(平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状)によると、修繕積立金の平均金額は、1万1243円となっています。
大規模改修工事を実施している間は、マンションの居住者皆様の日常生活にも影響が及びます。それでは、工事期間中に居住者の皆様にご協力いただきたい注意点を確認してみましょう。
大規模修繕工事では、ベランダ・バルコニー内も「共用部分」に位置付けられているため、修繕工事の範囲内になります。ベランダ・バルコニーの工事では、窓サッシ廻りの塗装工事や防水工事、水洗いなどを実施します。
そのため、作業に影響を及ぼす恐れのある窓の網戸は取り外し各自室内で保管をするようにしましょう。もし、網戸の取り外しがご自分では難しい場合や取り外し方法が分からない場合には、工事担当者にご相談されることをおすすめします。
また、ベランダ・バルコニー内に置かれた鉢植えや床置きの物干し台などの私物は片付けてもらう必要があります。私物が置かれたままだと、工事が進まず、結果として工期の遅れに繋がってしまいます。
鉢植えプランター類は、各自室内での保管が基本ですが、管理組合の意向によっては共用部分のスペースに一時的に保管するケースもあります。
マンションの大規模修繕では、外壁の塗装や補修も行うため、作業をするための足場を組まなければなりません。駐車区画が足場と重なってしまう場合には、車を一定期間移動しなければならないケースもあります。特に、建物自体のすぐ近く(外壁ラインのすぐ下)の駐車区画を利用している方々は注意が必要です。
また、補修のための資材置き場や作業員の現場事務所、仮設トイレを設置する際も、広いスペースが必要となります。多くの場合、駐車場が設置スペースとして使用されますので、この場合も車の移動が必要となります。
この駐車場移動に関して一般的には、マンションの管理会社や施工業者に協力してもらい、マンション周辺の月極駐車場などを探してもらうケースが多いです。
車の移動が必要な場合、一時的に普段の駐車区画と異なる場所へ駐車することとなりますので、この点も注意しておく必要があります。
基本的に工事期間中は洗濯物をベランダやバルコニーに干すことはできません。
塗装工事中に、洗濯物をベランダやバルコニーに干してしまうと、足場の設置や下地補修工事によって舞った埃や粉じん、塗料や高圧洗浄時の泥水が飛散し洗濯物に付着してしまう恐れがあります。窓廻りにビニールの養生を行うことによって、ベランダやバルコニーへの出入りが出来なくなっています。
そのため居住者の皆様には、部屋干しやコインランドリーを利用するなどのご協力をお願いすることとなります。ただ、工事中であっても、工事の日程次第では洗濯物を干すことができるタイミングもあります。
工事期間中は、エントランスホール内や外部の目立つ場所に作業掲示板が設置され、、作業の進捗が分かる工程表や週間工程表、毎日の作業内容、居住者へのお知らせといった内容が明記もしくは掲示されます。
その中には、洗濯物が干せる日はいつか明記された「洗濯物情報」も基本的には掲示されていますので、ベランダやバルコニーの利用が可能かどうかは、作業掲示板のご確認をお願いいたします。
マンションの修繕工事では、階段や廊下の鉄部塗装、外壁塗装などマンションの外側、内側どちらでも作業を行います。そのため、作業員がマンション内部のロビーや階段、廊下に立ち入り作業を行うことも珍しくありません。
ただ、マンション内部での作業で作業員が居住スペースにまで入ることはありません。玄関のドアをけたままにしておかない限りは、部屋の中を作業員に見られてしまうといった心配はありませんのでご安心ください。
しかし、大規模修繕では足場を設置するため、外にいる作業員から室内が見える状況となります。
また、ベランダやバルコニーは共有部分であるため、修繕の必要があればバルコニーに作業員が立ち入ることもありますので、居住者の皆様は、プライバシー保護のためにも作業中はカーテンをお閉くださいますようお願いいたします。
前述の通り、大規模修繕の期間中は足場を設置するので、足場を利用して外部の人間が侵入する恐れがあります。
施工会社も対策として、足場の開口部を施錠したり、作業員と判断できるように腕章やベストを着用していることがほとんどです。さらに空き巣対策を徹底しているところでは、防犯ブザーや防犯カメラ、人感センサー付きのサーチライトなどを設置している場合もあります。
居住者の方も室内の様子が見られないようにカーテンを閉めたり、窓の施錠を徹底することが大切です。
万が一、空き巣被害や窓ガラスの破損などの被害を受けた場合は、施工会社が加入している保険で補償するのが一般的です。もしもの時の為にも、保険の内容について確認しておくと安心です。
マンションは経年によって徐々に劣化が進行するので、資産価値の低下や事故を防ぐためにも定期的な大規模修繕を行うことが大切です。
大規模修繕工事中は、居住者の皆様にもご協力いただかなければいけない準備や対策もありますので、ぜひ上述の注意点を参考にしてください。
一般的にマンションの大規模修繕は、12〜15年周期で実施されます。同じマンションに30年〜50年住み続けた場合には、計算上2〜3度は大規模修繕を経験することとなります。
マンションの資産価値を常にいい状態で保ち続けるためにも、管理組合員である区分所有者の皆様には、ぜひ大規模修繕に対して積極的な発言やご協力をお願いいたします。
大規模修繕に関して不安な点や気になることがありましたら、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。